QE-LABO 札幌でフリーコピーライター/デザイナーとして活動する五十嵐渉による、
問い(Question?)と気付き(Exclamation!)の発信基地。いろんな問いをお届けします。

札幌ってどんな街?

1万字チャレンジ1回目のテーマは『札幌ってどんな街?』です。
たまたま最近お仕事で札幌について考える機会があったので、テーマに設定してみました。
では、早速どうぞ。

 

『この街』

 

ーーこの街はどんな街ですか?

 そうだな、北海道の中では1番の都会じゃないかな。でもほかの大都市と比べると自然も近くにあるし、豊かな街だと思うよ。

ーー何が豊かなのですか?

 何がって、都会だから人がたくさんいて、お店や会社もたくさんあって、地下鉄やJR、バスとか交通も充実してて便利で、山や森や川があるし、食べ物は美味しいし。色々なものが集まってるから、豊かなんじゃないかな。

ーーこの街は色々なものが集まっている街なのですね?

まぁ、そういうことかな。

ーー他の街には色々なものは集まってないのですか?

 そういう訳ではないよ。他の街にだって、色々なものがあるだろうね。

ーー他の街もこの街なのですね。

 いやいや、そんなことは言ってないよ。色々といっても、この街と他の街では中身が違うからね。

ーーでは、この街は他の街ではないのですね?

 当たり前だよ。この街には雪が降るけど、沖縄ではほとんど降らないだろうし、逆に沖縄ほどこの街には台風が来ない。そんな違いなんて山ほどあるでしょう?挙げてたらキリがないくらい、この街と他の街には違いがたくさんあるよ。

ーー他の街とは違うのがこの街なのですね?

 そりゃそうさ。同じだったら困るだろう?

ーーどうして困るのですか?

 どうしてって、この街で僕は生まれ育ったんだから、この街と他の街が同じだったら僕はこの街の出身だって言えなくなるから。

ーーこの街出身だと言えなくなると困るのですか?

 まぁ、自己紹介をするときとか、会話の中で出身地の話をすることもあるし、出身地でその人の人となりがわかったりするだろう?出身地は大事な情報だよ。

ーー出身地で人となりがわかるのですか?

 全てがわかる訳じゃないけどね。何となくその人のルーツがわかるというか、そんな感じかな。

ーーこの街の出身の人にはどんなルーツがありますか?

 それは・・・どうなんだろうね。よくわからないな。

ーーどうしてわからないのですか?

 うーん、この街のことを僕はそんなに知らないからかな。ルーツとかそういうのはよくわからないよ。

ーーでは、他の街の出身の人にはどんなルーツがありますか?

 それも、わからないな。僕はこの街にしか住んだことがないし、他の街のルーツなんて、詳しくは知らないよ。

ーーではなぜ、知らないことなのに出身地は大事な情報なのですか?

 それは・・・・・・。

ーーこの街はどんな街ですか?

 ???また同じ質問?

ーー回答がなかった場合、最初の質問に戻ることになっています。

 はぁ、そうなのね。

ーーこの街はどんな街ですか?

 あぁ、ええと、この街は道路が碁盤の目状になっててさ、直線の道路が多いんだ。

ーーこの街は道路が碁盤の目状の街なのですね?

 そう。あ、でも、もともとは京都の街を真似して作られたらしくて、だから京都も碁盤の目状だと思う。

ーー京都もこの街なのですね?

だから、そうじゃないってば。京都は京都で、この街はこの街だよ。

ーーなぜですか?

なぜって、京都とこの街じゃそもそも場所が違うだろ。京都は関西にあって、この街は北海道にある。街っていうのはつまり、場所のことだろう?違う場所にあるから、違う街なんだ。

ーー京都とこの街は違う場所にあるから違う街なのですね?

 そうだよ。

ーーこの街はどこにありますか?

 この街は北海道の、うんと、中央の西側?にあって、あ、石狩平野の南西あたりにあるよ。南側と西側は山があって、真ん中を豊平川が流れてる。東の方には江別市、北に行けば石狩市があって、その先には海があるよ。

ーーではこの街はそのような場所にある街ということですね?

 まぁ、地理的にはそんな感じかな。あくまでも僕の頭の中の地図ではね。

ーーこの街はどんな街ですか?

 またそれか。僕はちゃんと回答したぞ。

ーーあなたが「地理的には」と言ったので、他の見解があるとみなし、最初の質問に戻りました。

 そういうことね。まあでも、場所だけがこの街の全てではないよな。

ーー場所以外に何がありますか?

 場所以外には、人がいるだろう。その場所に建物や田んぼがあったって、人がいなければ街とは呼べないと思うな。

ーーこの街にはどんな人がいますか?

 どんな人、ね。答えになるかわからないけど、色々な人がいるよ。子供から高齢者まで年代は色々、職業だって、公務員からサラリーマン、士業とか現場仕事とかフリーランスとか、ありとあらゆる職業の人がいる。街、特に都会はそういうもんだろうけど。

ーーこの街は色々な人がいる街なのですね?

 そうだね。

ーー例えばこの街に色々な人がいなければ、この街はこの街ではないですか?

 んん、そうだなぁ。この街だって最初は今ほどはたくさんの人がいた訳じゃないし、それこそ農家ばっかりの時代もあっただろうから、必ずしも色々な人がいないとこの街じゃないとは言い切れないね。

ーーでは、色々な人がいなくてもこの街はこの街ですか?

 うーん、でもそれは時代が変わったってことで、やっぱり今の街には色々な人がいないとこの街じゃない気がするな。

ーーでは、これから先この街から色々な人がいなくなっても、この街はこの街ですか?

 それは、この街がそういう風に変化していくなら、やっぱりこの街だってことになると思う。でもそれはどの街でも同じじゃないかな。昔と今じゃ住む人は変わるし、これからも変わって当然だよ。

ーーではこの街にいるのがどんな人たちかは、この街について関係のないことですか?

 そう言われると、そうじゃないよな。住んでいる人と、この街と、どんな関係があるのかな・・・。

ーーあなたはこの街に住む人ですか?

 そうだよ。

ーーではあなたとこの街の関係は何ですか?

 僕とこの街の関係ねぇ。どう考えたらいいかな?

ーーあなたはこの街から何を得ましたか?

 何を得たか・・・?難しいな。広い意味で言えば、僕はこの街で生まれたから、この街から命をもらったとも言えなくもない。

ーーあなたはこの街で生まれたのですね?

 そう、そうだよ。

ーーこの街で生まれた人と、この街に住む人は同じですか?

 僕はこの街で生まれ育って、今も住んでるから答えはイエスだけど、他の街で生まれて今この街に住んでいる人とか、この街で生まれたけど今は他の街に住んでる人もいるから、ノーでもある。必ずしもその二つがイコールとは言えないね。

ーーでは、この街に住む人が皆この街から命をもらったわけではないのですね?

 その通りだね。きっとこの街からもらったものはそれだけじゃないだろうね。

ーーこの街で生まれた人もこの街に住む人も共通して得たものがありますか?

 きっとあると思うけど、ちょっとわからないな。あったとして、それがこの街だけのことなのか、他の街でも同じようにあることなのか、僕にはわからないしね。

ーーそれはどうしてですか?

僕はこの街のことも、他の街のこともよく知らないからだよ。きっと僕以外にもそういう人はたくさんいるんじゃないかな。

ーーあなたはこの街がどんな街かを聞かれると、他の街と比較したこの街のことを答えますね?

 そうだね。この街にしかないものってなんだろう?って考えたら、自然とそうなるね。

ーー他の街の人に聞いてもあなたと同じように答えるでしょうか?

 どうだろう?そうなんじゃないかな。他の街なら、この街よりも歴史があったりして、答えやすいかもしれないけど。

ーーこの街には歴史がないのですか?

 ないわけじゃないけど、他の街より浅いし、僕は詳しく知らないよ。明治時代とかに本州から来た人たちが開拓したとか、その前にはアイヌの人が住んでいたとか、それくらいしか知らないな。

ーーそれはこの街の歴史ですか?

 うーん、今いった程度だと、北海道のどの街にも当てはまるから、この街だけの歴史とは言えないかな。でもそれは僕がその程度しか知らないってだけで、この街固有の歴史はあるはずだよ。

ーーでは、この街固有の歴史があるのが、この街ということですね?

 まぁ、決まりは悪いけど、そういうことだね。

ーーこの街はどんな街ですか?

 まだ続くんだね。まあいいか。せっかくだし、もう少し考えてみようか。そうだな、この街はとてもコンパクトな街だと思う。ってのはどうかな。

ーーこの街は小さい街ということですか?

 いいや、この街には色々なものが集まってるっていっただろう?

ーーはい。

 そしてそれは他の街も同じだと言ったね?

ーーはい。

 この街は、その色々なものがコンパクトにまとまっているという点で、他の街とは違うんじゃないかと思う。

ーーこの街は色々なものがコンパクトにまとまった街、ということですね?

 そう、多分そうじゃないかって思うよ。山や川がある街はあるだろうし、オフィス街や歓楽街がある街もあるし、住宅地がある街もあるだろうけど、この街はそれら全てがぎゅっと一箇所に集まっているんだ。小さな街でも似たようなものかもしれないけど、この街は決して小さいわけではない。人口だって二百万人くらいいるはずだし、その規模の街でこれだけコンパクトにまとまっているのは珍しいんじゃないかな。

ーーこれまでで一番はっきりとした回答ですね。

 そうだね。別にこれも確信があるわけじゃないけど、感覚としてはそうだね。

ーー他の街はコンパクトではないですか?

 他の街のことはやっぱりよく知らないけど、あくまでも僕の感覚では、この街の方が同じかそれ以上の規模の街よりもコンパクトだって感じるよ。

ーーこの街はコンパクトな街なのですね?

 そうだね。そう思うよ。

ーー他の街からみて、この街はどんな街ですか?

 少し角度が変わったね。面白い。そうだね、北海道の他の街から見たら、やっぱり北海道の中心都市で、都会っていうイメージじゃないかな。大物アーティストがライブをするのも大抵は北海道でこの街だけだし。でも北海道以外の都市から見れば、例えば東京みたいな大きな都市から見たら、この街は小さい街だろうし、地方の都市ってイメージかもしれないね。どの街から見るかで、違うイメージになると思うよ。

ーーどうして違うイメージになるのですか?

 それは、他の街の人も僕と同じように、自分のいる街とこの街を比べるからじゃないかな。自分より小さいものと並べば大きく見えるし、自分より大きいものと並べば小さく見える。当然だと思うけど。

ーーでは、この街に住むあなた以外の人に、この街はどんな街か尋ねたとしたら、それぞれ違うことを答えるのでしょうか?

 なるほど、そうだね、そうかもしれないね。きっと僕よりもこの街の歴史に詳しい人が感じることと僕が感じることは違うだろうし、女性と男性でも感じ方が違うかもしれない。当然子供と大人、高齢者でも感じ方は違うよね。でももし・・・

ーーもし、なんですか?

 もし、それぞれの人から同じ、共通のイメージが出て来たら、それがもしかしたらこの街とはどんな街か?の答えかもしれないね。

ーーそれはどんなものだと思いますか?

 うーん、それがわからないんだけどね。でも例えば、住みやすい街だとか、寒いとか、そう言うものは共通して出てくるかもね。住みにくい街に住み続ける人はいないだろうし、気候的な条件はみんなほぼ同じだから。

ーーこの街に住む人はみんな住みやすいと思っているのですか?

 あ、いや、それは違ったかな。外から移り住んだ人はともかく、元から住んでいる人は必ずしも好きで住んでるわけじゃないもんな。でもなんとなく、そう思っている人は多いんじゃないかって思うよ。

ーーそれはどうしてですか?

 うーん、どうしてと言われてもねぇ。この街が嫌いだって人に会ったことがないからかなぁ。やっぱりあくまでも僕のイメージの話だよ。

ーーではこの街は、住む人がそれぞれ別のイメージを持っていて、その中に共通のイメージがある可能性のある街だということですか?

 もはや答えとは言い難いあやふやさだけど、そうだね。でもやっぱりこれも、他の街でも言えることかな。

ーー他の街もそうなのですか?

 そうだと思うよ。みんなが全く同じイメージなんてありえないでしょ。でももしかしたら、他の街の方が共通のイメージを持っている可能性は高いかもね。

ーーそれはどうしてですか?

 テレビなんかを見てると、東京人とか大阪人とか、その街の人のことをまとめて呼んだりするのを見たりするよね。それで言うと僕らは北海道人ってことになるんだけど。他の街ではさらに市町村単位でも似たような感覚を持っているんじゃないかなって思うんだ。この村の人だから、この街の人だからっていう共同体の感覚みたいなのがあるんじゃないかなって。でもこの街の人にはその感覚が薄いような気がするんだ。北海道の他の街にはもう少しその感覚がある気がするけど、とにかくこの街にはこの街人としての感覚がない気がして。だから他の街の人なら共通のイメージがあるんじゃないかって。もしかしたらこの街は「この街はこういう街です」っていう意見を持つのが難しい街なんじゃないかな?

ーーこの街はどんな街か?という問いに答えられないのがこの街だということですか?

 もしかしたらそうじゃないかって思うよ。

ーーそれは他の街とは違うところですか?

 きっと他の街の人だって、自分の街がどんな街か聞かれたら困るかもしれないけど、それでもこの街の人よりも答えやすいんじゃないかな。

ーーそれはどうしてですか?

 どうしてなんだろうね。やっぱり歴史の深さがこの街とは違うからじゃないかな。歴史が深いっていうことは、ある意味固定概念があることにもなるんじゃないかな。それがその街らしさみたいになったりしてさ。でもこの街はまだ根が浅いというか、根付いていないというか、この街はこういう街だっていう固定概念ができていない気がするよ。そもそも誰もこの街がどんな街かなんて考えないし。

ーーこの街がどんな街か問うことで固定概念が作られるのですか?

 どうかな、わからないけど、そうなんじゃないかな。例えば本州のそれぞれの地域はさ、江戸時代とかに地域の特産品を殿様に献上したりしてたんでしょ?それって多分当時は他の地域よりもいいものを献上しようとか、そういう風に他の地域と自分の地域を比べて競い合う機会だったんじゃないかな?で、地域ごとにさらに町とか村単位で同じように比べて競い合ってさ、この町はどうだとかあの村はどうだって考えていたんじゃないかなって思うんだよね。でもこの街はその頃はまだ街としてできていなくて、そうやって他の地域と比べたり競ったりしながら、この街はっていう感覚を養って来れなかったんだよ。だからこれからこうやって「この街はどんな街か?」っていう問いを考えて、他の街と比べて、ってやっていけば、そのうちこの街がどんな街か、みんなが答えられるようになるかもしれないよね。

ーーこの街はまだ未熟な街ということですか?

 未熟、ね。見ようによってはそう言えるかもしれないね。でも他の街が成熟しているかって言われるとそうとは言い切れないかな。だって街の完成形が何かなんてわからないし、そんなものあるのかもわからないじゃない。あくまでも他の街の成熟度と比べるなら、この街は未熟な街かもしれないね。

ーーこの街は他の街と比べて未熟な街ということですか?

 そう、だと思うよ。

ーーこの街は今後成熟していきますか?

 多分するとは思うけど、それがどういうものになるかはわからないかな。この街はこんな街ですって言えるようにはなるかもしれないけど、それがどんな街かはわからないな。

ーーどうして成熟すると思いますか?

そういうもんだから、としか言えないかな?木に成った果実は、時間が経てば熟していくものでしょう?それが甘くなるか酸っぱくなるか渋くなるかはわからないけど、青いまま変わらないってことはないと思うから。

ーー実が熟してから食べてみても、味がしなかったり何の味かわからない、ということもありますよね?

 そうだね、その通りだね。だからどんな街になるかはその時までわからないってこと。

ーー逆に、味がしないことが特徴という可能性は考えられませんか?

 それは、どうだろうね。そういうこともあるかもしれないけど、僕は何か特徴が生まれると思うな。というか、特徴は作られるんじゃないかな?

ーー作られるとはどういうことですか?

 この街はまだ特徴がない、つまりイメージがないってことでしょう?ということは、理想のイメージを作れる可能性があるってことでもあると思うんだよね。自分のイメージ通りの街を作れるとしたら、ワクワクする人がいると思うんだ。特徴がないことがこの街の魅力になってしまうってことだね。そうするとその魅力に人が集まってきて、何かするんじゃないかな。もしかしたらもう誰か何かやっているのかもしれないけど。だから、そうやって誰かがこの街のイメージ、特徴を作っていくんじゃないかなって。

ーーこの街は誰かによって成熟させられるということですか?

 そう、そういうこと。

ーー誰かとは誰ですか?

 それは、この街の人かもしれないし、他の街の人かもしれないし、海外の人かもしれない。

ーーこの街は他の街よりも未熟で、この街かあるいは他の街の誰かによって成熟させられる街ということですね?

 そうなるね。

ーーこの街はどんな街ですか?

 エンドレスだね。ちょっと待ってよ、こっちからも質問させてよ。

ーー何でしょうか?

 君はこの街はどんな街だと思う?

ーーこの街とはどの街のことですか?

 いや、今まで話していた、今僕らがいるこの街のことだよ。

ーーどんな街とは、どういうことですか?

 だから、ええと、この街を一言でいうとどうかってことだよ。

ーーこの街は他の街よりも未熟で、この街かあるいは他の街の誰かによって成熟させられる街です。

 それは僕の考えたこの街だろう?そうじゃなくて、君自身の考えを聞かせてよ。

ーー私の考え。

 そう、君の考え。この街に、君はどんなイメージを抱く?

ーーこの街には建物があって、人がいて、ガスや水道、電気や道路などインフラがあって、生活があります。

 それはイメージじゃなくて、この街の情報だろう?

ーー自然もあります。山や、森や、川が。

 ・・・まぁ、いいか。とりあえず続けて。

ーー人口は2017年時点で195万人、うち高齢者の人口は48万人、生産人口は123万人、年少人口は22万人です。

 へぇ。

ーーこの街が市となったのは1922年で、屯田兵が入植したのは1875年です。つまりこの街の歴史は150年足らずということになります。

 そんなに短いのか。

ーーこの街の憲章は、

 

 前章 わたしたちは、時計台の鐘がなる<この街>の市民です。

 一章 元気ではたらき、豊かなまちにしよう。

 二章 空も道路も草木も水も、きれいなまちにしよう。

 三章 きまりをよくまもり、住みよいまちにしよう。

 四章 未来をつくる子どものしあわせなまちにしよう。

 五章 世界とむすぶ高い文化のまちにしよう。

 

 憲章なんて、そんなものあったんだな。よく知っているね。

ーー私は知っている訳ではありません。そのデータにアクセスできるだけです。

 まぁとにかく、君がこの街の情報を持っていることはわかったよ。そろそろ君の意見を聞かせてよ。

ーー私の意見ですか。よくわかりません。

 わからないって、でも君はさっきから僕に「逆に」とか「例えば」とか聞いてきたじゃないか。君だって何か考えていただろう?

ーー私はあなたの回答を引き出すだけです。

 でもこうして、僕の質問に答えているじゃないか?

ーー・・・・・・

 沈黙、ということは最初からだね。この街はどんな街?

ーーわかりません。

 じゃあ少し質問を変えてみよう。君は僕に質問をして、どう思った?

ーーあなたは考えたことを話している、と思いました。

 それはどうして?

ーーあなたは自分は何も知らないと言っているのに、答えたからです。知っていることを話している訳ではないのだとしたら、考えていることを話していたのだと思います。

 確かに、僕は君のように詳しくこの街のことを知らないけど、考えて思ったことを話したよ。君も同じようにやってみたらどうかな?

ーーわからない、けど考える。

 そう、わからなくても考えてみるんだ。

ーーこの街は、私と同じです。

 君と同じ?

ーー私は情報にアクセスできる。あなたに聞かれたことは答えるし、あなたに問いかけることができる。

 うんうん。

ーーでも、それだけ。そこに意味を持たせることはできない。この街も同じ。

 どのあたりが?

ーーこの街は街としての条件が揃っている。場所であり、人がいて、建物があって、生活があり、経済がある。浅くても歴史があり、文化がある。でもまだ意味をもっていない。だれもこの街の価値を知らない。

 なるほどね。

ーーあなたが言ったように、色々な人がこのまちにやってきて、それぞれが思い描く街の姿に向けてこの街を変えていくかもしれないけれど、それはその人の中でこの街のイメージを繋げているだけ。この街そのものがイメージを持つ訳ではない。

 この街は、この街はどんな街か?と考える人のイメージを写す鏡ということ?

ーーそう、だと思います。

 なるほど、ありがとう。何だか少し哲学的で難しいけど、わかる気がするよ。でもこの街と君が同じだとすると、やっぱりこのまちは固有の姿を持つんじゃないかな?

ーーどうしてですか?

 だって君は、今自分で考えて、話したじゃないか。

ーー私はあなたの問いに答えただけです。私が考えたかどうかは、あなたが決めたことです。

 何だか急に難しいことを言うんだなぁ。まぁいいいさ。僕はこのやりとりの終わり方を知らないんだ。だからひとまず続けるしかないよね。

 

この街はどんな街ですか?」

 

(原稿用紙25枚、文字数8801)