QE-LABO 札幌でフリーコピーライター/デザイナーとして活動する五十嵐渉による、
問い(Question?)と気付き(Exclamation!)の発信基地。いろんな問いをお届けします。

『宇宙に外側はあるか』を読んで

『宇宙に外側はあるか』を読んで

 

松原隆彦=著、光文社

 

宇宙についてこれまでの科学でわかっていること、有力な説、検証が必要な説、これから先にわかるかもしれないことなど、宇宙についてわかりやすく説明された本でした。

 

思えば小さい時から「宇宙ってどうなっているんだろう?」ということをたくさん考えてきた気がします。

例えば「タイムパラドックス」とか「パラレルワールド」とか、SF映画とかアニメや漫画でも出てくる考え方なんかは、宇宙のことを調べたり考えたりすると必ず出てくるキーワードで、多くの人が一度は耳にしたことはあるんじゃないかと思います。

僕はそんなことを考えるのが好きで、昔からあれこれと考えて頭の中で果てしない宇宙を想像して楽しんでいた記憶があります。

 

そもそも宇宙のことはよくわかっていません。

というよりも、わかればわかるほどにわからないことが増えるのです。

これは著者が本の中でも語っていますが、宇宙、科学や学問の世界の多くはそうなのかもしれませんが、わかることが増えるたびに新たなわからないことが増えていくものなのだといいます。これは誰もが実感できることかもしれませんが、お仕事でもなんでも成長するとその分だけ次の課題が現れて、それは成長する前よりも難しい課題であることが多いと思います。

科学の世界も同じで、一つ何かがわかると二つ三つと新しい謎が現れ、それはかつてよりも難題であることがほとんどなのでしょう。

 

つまり今回宇宙についての本を読んでも、そこにあるのは謎に対する答えではなく、その先のより大きな謎だったというわけです。

そんなものを読んでしまうと僕の好奇心が刺激されるばかりで、何に気が付いたとか、何を学んだとか、そういう考えには至りにくいのです。

 

では、この本を読んだことは無駄であったか?というと、決してそうではありません。むしろその逆なのだと思います。

以前読んだ田坂広志先生の「知性を磨く」という本に、こういう一節がありました。

 

「知能」とは、「答えの有る問い」に対して、早く正しい答えを見出す能力。

「知性」とは、「答えの無い問い」に対して、その問いを、問い続ける能力。

 

そして田坂先生は知性を磨くことがこれからの時代には大切だと言っています。

今回の本のように「宇宙はどうやって始まったのか?」という問いであったり、「心とは何?」とか「私とは何?」といった哲学的な問いももちろんですが、日々の仕事や生活や人間関係における問いもまた、「答えの無い問い」だと言います。

 

こうした「答えの無い問い」を問う力である知性は、当然ですが磨かねば成長しません。そう言った意味で、今回のように「宇宙」というテーマで知識を高めてより多くの問いを自分に問いかけられるようになることは、非常に有意義だと言えます。

 

時々「実社会に役に立たない学問は必要ない」というようなことを言う人もいますが、おそらくその人は自分自身で次々と「答えのない問い」を見つけられる人か、あるいは本質的な成長をしない人なのだと思います。

学問があるからこの世界に新たな謎が生まれ、新鮮な答えのない問いに触れられるのです。例え何の役に立つのかわからないようなことであっても「これが何の役に立つのか?」という問いは生まれます。それは本来は人が成長するために必要な問いであるはずです。

学問の役割は「わかること、役に立つことを増やすこと」ではなく「わからないこと、役に立つ可能性を増やすこと」にあるのだと思います。そしてそれは学問に限らず、人であれば誰もが担うべき役割でもあるはずです。だってそれは、それぞれが自分の人生において、自分自身に問いかけることと同じではないでしょうか?「自分には一体何ができるだろう?どんな可能性があるだろう?」という問いは、人が成長するために必要不可欠な問いでしょう。そしてその問いの答えは簡単に見つかるものではなく、きっと死ぬまで、自分自身に問いかけ続けなければならないでしょう。

 

役に立つものが価値があるのではなく、役立てることで価値が生まれる。

そして何かを役立て価値を見出す時に使う力が知性であり、「答えの無い問い」を問い続けることで知性は磨かれる。

そして「答えの無い問い」はこの世界のあちらこちらにあふれていて、それを「問い」として形にするのが学問の世界。

そう考えると、学問が「無意味で役に立たないもの」とは全然思えないでしょう。

 

それでも学問というものに抵抗があり、距離を感じる人も多いでしょう。

僕自身、別に大学に通った訳でもないですから、学問のがの字も知りません。当然論文なんか読めない訳で、こうして何か新しい科学の知識を得て問いを欲しても、普通には得ることができません。

 

ですが、そんな僕らのような人のために、誰かが本を書いてくれています。

今回の『宇宙に外側はあるか』のように、わかりやすく最新の宇宙のことを教えてくれる本があります。僕が求めれば、僕のレベルに合わせた「問い」に出会えるのです。

本だけではありません。そもそも全ての学問は過去の哲学者たちが自然や人と向き合うことで生み出してきました。今の時代でもきっと、同じことができるはずです。

何かを疑問に思う視点さえ持っていれば、誰でも「答えの無い問い」を見つけて、知性を磨くことができるのです。

 

何かにつまずいたり壁にぶち当たってると感じて立ち止まっているときは、「答え」ではなく「問い」を探すことを意識してみると、もしかしたら何かきっかけがつかめるかもしれません。

人間はそうして4千年以上進化を続けてきたのですから。