QE-LABO 札幌でフリーコピーライター/デザイナーとして活動する五十嵐渉による、
問い(Question?)と気付き(Exclamation!)の発信基地。いろんな問いをお届けします。

<学び場>職業人講話

今日は職業人講話というものに行って来ました。
僕が以前通っていた職業訓練所に赴き、現役のデザイナー講師として生徒さんの前でお話させていただくお仕事です。1コマ約50分の時間をいただき、ある程度自由に話をさせてもらいます。

ここ二年ほど、平均すると月に一回くらいのペースでご依頼いただくのですが、毎回、講師として話すことの学びの多さを実感します。
講師として招かれる以上は、「僕なんて教えることは何にもないですよ」とは言ってられません。とにかく自分の中から、生徒さんたちに伝える価値を見出さなければならない。生徒さんたちの一時間弱という時間を、何とか有意義にしたいと考えると、結局いつも僕自身がたくさんのことを学びます。そして最後には、生徒さんたちに何か少しでもプラスの時間となっただろうか?と考えると、そこからまた次の学びが始まります。

 

僕が講話をするときに考えることは2つあります。
生徒さんたちが聞きたいことは何か?と
僕が伝えたいことは何か?です。

ただそれは「生徒さんたちが聞きたいことを話す」ということでも「自分が伝えたいことを話す」とも違います。ニーズに対して提供価値を寄せていくこととは少し違うのです。

それは、僕が職業訓練を受けた時の経験から学んだことの一つです。
僕が職業訓練を受けた時、「Webデザインの技術」を学んで就職するという効果を望んでいました。しかし、最初に講師の方に言われたのは、「デザインとは興味を持つことであって、それは就職活動にも同じこと。自分や仕事に興味を持たないと何にもならない。せっかく職業訓練を受けるなら、そういうことを考えてみたらどうか」ということでした。
当時の僕にとって、その言葉は大変衝撃的でした。なんせ僕はそんなことを職業訓練で教えてもらえるとは「思っていなかった」からです。僕は職業訓練で学べると思っていたことじゃないことを学べたことが衝撃だったのです。それがそこで得た最大の学びでした。

僕が講話の時に意識するのは、そういった「予期せぬ学び」を作ることです。
人は自分が想像する範囲の学びをすると、それ相応の満足感を得ます。でもそれでは、自分という領域の中でしか学ぶことができないとも言えます。それは本当に有意義な学びと言えるでしょうか?
もちろんそれも大事な学びだとは思います。「こんなスキルが欲しい」「こんな情報が欲しい」と望んでそれを得ることは十分に有意義で、それによって成長していくことができると思います。しかし、それは「学習」であり「学び」とは少し違うと思うのです。「学習」が積み重ねていくことだとすれば、「学び」は積み重ねたことをある意味で壊すことだと思います。崩れて散らばった、今までに手に入れたものに「新しい価値」を見出して再び積み重ねていくことが学びだと僕は思っています。学びとは高く積み重ねることではなく、何度も積み重ねるものだということです。それを実現するのが「自分が期待することとは違うことを学ぶこと」なのではないでしょうか。

価値観が180度変わる、なんていう表現がありますが、それはこの学びの一番顕著なパターンとも考えられます。でも僕が講話でやりたいことはそこまでたいそれたことではありません。あくまでも生徒さんたちが想像することと「ちょっと違うこと」を目指しています。「デザイナーが話に来る」と聞いてどんな気持ちで待っているか、それを想像してそれとはちょっと違う方向からその期待に応える。もしくは全く何も期待していない人に、思いがけない学びを提供する。そんなことができたらいいなぁと思って、話す内容を考えています。
いい意味で聞き手を裏切ることが、その人たちにとって良い学びになるのではないかなと、思っているのです。

 

結局のところこれは僕が経験して良いと思ったことを他人に押し付けているだけかもしれません。
ただ、そういったことも含めて、こうして講話という形でお話しさせていただけることが僕にとって大変に大きな学びであることは確かです。
どんなに準備して行っても、生徒さんたちの反応がいまいちでその場で軌道修正しながら組み立て直したり、思ってた以上に食いついてくれて予定したことを話せずに質問に応え続けたり、色々あります。その度に自分が誰かの役に立つとはどういうことだろうとか、自分はナルシストだなぁとか、自分では大したことじゃないと思っても聞き手には大事な情報なんだなぁとか、色々なことを考えるのです。

ちなみに、今日の主題にしたのは「デザインって楽しいよ!」でした。自分の仕事を楽しいよと紹介できることは幸せなことだと思いますが、それを人に話すということはとても難しいことです。
なんにせよ、今はまだ「僕にとって有意義な学び場」でしかないかもしれないこの機会を、生徒さんにとっても有意義に感じてもらえるように精進していきたいと思います。